飲食についての知識からの予防

飲食の直後は、口腔内の細菌が糖分から酸を作り出して歯垢のpHが低下します。平常時は平均的にpH6.8ですが、飲食によりpH4〜6に急低下し、その後ゆっくり1時間くらいの間に回復します。これにより歯の脱灰が進む臨界pHを超えると歯のエナメル質が脱灰され溶けはじめます。臨界pHは、一般にpH5.5以下であるといわれていますが、歯の石灰化度によっても変化します。たとえば、歯の石灰化度が永久歯よりも低い乳歯では、これより高いpHでも脱灰が進みます。固くて不変に見える人間の永久歯もpH5.5の臨界点を超えることによって、一日の内に何回も溶かされたり、また固くなったり(再石灰化)を繰り返しているわけです。溶かされている時間が長くなると再石灰化が追い付きません。虫歯になるわけです。

糖類の中でも、砂糖の主成分であるショ糖が最もう蝕のリスクを高めます、次にブドウ糖や果糖といった単糖類がう蝕を増加させるリスクが高くなります。

穀物に多いデンプンは、pH5.5〜6.0程度にしか下げませんが、デンプンに砂糖が混ざった食品は、デンプンだけの場合よりう蝕のリスクが高くなります。また、代替甘味料には様々な種類がありますが、キシリトールやアスパルテームなど臨界pHまで下げない糖類があります。

飲食の回数が増加すると、歯垢のpHが低下している時間が長くなります。このため、歯の脱灰が進み、また、再石灰化量が減少するため、う蝕となりやすくなります。
間食としてチョコ・キャラメルなど粘着性があり、糖分が多く含まれているものはなるべく避けた方がいいでしょう。クッキー、クラッカーなど意外に多く糖分の含まれている食べ物も出来れば避けた方が良いでしょう。食べるのであれば食後にブラッシングを行うか水で口をすすぐのが良いでしょう。また、一緒に摂取する飲み物はお茶や水、牛乳など糖分の入っていないものが好ましいでしょう。間食の回数もできるだけ少なくして、脱灰の時間を短く、再石灰化の時間を長くとります。だらだら食べるのが一番よくありません。

砂糖を含んだ飲み物、清涼飲料水などを飲み続けたり、口腔内に長く残る飴類をなめ続けるのも良くないです。清涼飲料水には10%前後の糖分が含まれた飲料も多く、スポーツドリンクでも5%前後あります。スポーツドリンクを健康ドリンクと勘違いされている方が時々おられますが、そうではありません。飲みやすくするために糖分が含まれています。だらだら飲まなくてはいけないのであれば、糖分の入っていないお茶や水に切り替えてください。この場合、塩分など必要な養分は別にお取りください。スポーツドリンクをいつも与えていたために全部の歯が虫歯になってしまった幼児の例等が報告されています。

黒酢も健康にいいと盛んに宣伝されていますが、歯のためにはあまり良いとは言えません。pH3.1です。だらだら飲むことはないでしょうが、気をつけましょう。

ペットボトル飲料(500ml)に含まれる糖分の量を角砂糖に換算すると(角砂糖は1個約5g)

                   角砂糖               pH

コーラ                9 個分              2.2

乳酸菌飲料(カルピス等)     9 個分              3.4

サイダー               7 個分              2.9

スポーツドリンク          5 個分              3.5

紅茶                 3 個分              5.5

にもなります。

他にもリポビタンDpH2.5、黒酢pH3.1など注意が必要です。

比較的歯に良い飲み物は、お茶pH6.3、牛乳pH6.8、水pH7.0と安心して飲めます。

他に食品として知っておいた方が良いのは、レモンpH2.1、グレープフルーツph3.2、オレンジpH3.5、みかんpH3.6です。みかんによる歯の酸蝕症は有名です。愛媛の人は1日に4〜50個食べる人がいます。

ジャガイモ、人参、とうもろこし、キャベツなどの野菜がpH4〜6です。

レモンドレッシングpH3.1、イタリアンドレッシングpH3.4、ゆずぽんpH3.4、フレンチドレッシングpH3.5、味ぽんpH3.8、和風ドレッシングpH4.0、醤油pH4.7、なすとごぼうの味噌汁pH5.4となっています。

肉・魚がpH5〜6。米・パンがpH5〜7。チーズがpH6〜7です。

気になるお酒はどうでしょう?ビール(銘柄によって違うようです。キリンクラシックラガーで)pH4.3、日本酒(これも銘柄によるようです。ワンカップ大関で)pH4.4。赤ワイン、白ワイン、これは葡萄から作ります、pH2〜4。焼酎pH3〜4 。これは甕仕込だとpH7に近くなるという説もあります。梅干やフルーツで割る場合も酸性度に気を付けましょう。缶チューハイでpH2.9というのが出てきましたが、これも銘柄で全然違うでしょう。シロップで糖分が追加されている可能性があります。注意が必要です。アルコール消毒だと主張される方もおられますが、pH的にはかなり低いですので、だらだら飲みはよくないんでしょうね。水の良くないヨーロッパではワインを水代わりに飲むと言われますが、ワインによると思われる歯の酸蝕症の報告はあります。

  

プラーク・コントロールからの予防

プラーク(歯垢)はただの食べかすではなく、実は口腔内細菌の塊なのです。糖を含んだ飲食物を食べるとプラーク中の細菌が酸を産生し、その酸で歯が溶かされるのです。糖を含んだ飲食物を控えると共に、細菌の絶対数を減らすことも大事です。歯ブラシで歯の表面や裏側、咬み合わせの面を磨くと共に歯ブラシでは届きにくい隣接面(歯と歯の隣り合った部分)の汚れを落とすためにもデンタル・フロス(糸ヨウジ)などの補助的道具を積極的に使用することも大事です。  

フッ素で虫歯予防

昔はフッ素が歯質を強化すると言われていましたが、フッ素が虫歯予防に効果があるのはその制菌(菌の繁殖を抑える)作用からだそうです。非常に効果的な方法だと思いますが、アレルギーがでる方がおられるという歯科医師もいます。当院でもフッ素塗布をした翌日に2回続けて具合が悪くなった、3回目はフッ素塗布をやるべきかどうかと相談を受けたことがあります。予防方法はこれしかないわけではなく、やらないと虫歯になるわけでもないということで、3回目は見合わせました。なんともなければどんどんやってもらって良いと思います。

フッ素の使用法には何通りか方法があります。

・フッ素塗布  歯科医院にて行います。年に3〜4回。プラークコントロール後ゲル状の薬液を歯面に塗布します。塗布後30分は飲食禁止です。つばを出すのはかまいません。

・フッ素洗口  歯科医師の指導を受けた後、自宅でおこないます。専用の容器に薬液を溶かし、そこから専用のコップに取り出しブクブクうがいをします。薬液は飲まずにはきだします。1日1回毎日行います。

・フッ素配合歯磨き粉 一番手頃な方法でしょう。薬局かスーパーの歯磨き粉売り場で成分表を見ながらフッ素配合のものを選んで歯磨きします。隣接面(歯と歯の隣り合ったところ)など歯ブラシが届きにくいところは、一度デンタルフロスを通し汚れを取った後に、デンタルフロスに歯磨き粉を付けてこすり付けます。

キシリトールガムによる予防

キシリトールは糖アルコール。虫歯の原因にならない代用糖の一種です。 
 糖アルコールはプラーク中のpHを5.7以下に下げない、う蝕の原因となる酸の産生がない、唾液の分泌をうながす、等の理由で、「むし歯の原因にならない」だけでなく、う蝕の原因になりにくい細菌叢(グループ)の形成をうながす、プラークの量と付着性を減少させる、脱灰を防ぎ、再石灰化を促進させる等の理由で、「むし歯の発生を防ぐ」働きもあります。

このように虫歯の原因にならないだけでなく、虫歯の発生を防ぐような予防作用も兼ね備えた代用糖は他にありません。

虫歯予防にはガムに含まれているキシリトールは炭水化物の90%以上でなければ酸を生成する糖、人工甘味料の配分量からキシリトールの本来の効果は期待できないと言われていますが、歯科医院専売のキシリトールガムは100%〜90%となっているのに対し、スーパーやコンビニで市販されているキシリトールガムは一部を除いて70〜30%が主であるようです。歯医者で買うキシリトールガム以外はあまり意味がないということになります。

虫歯予防という観点から優先順位を考えるとここに挙げたものの中で最下位になります。「何にもやらないよりは良い」ぐらいでしょうか。
 
 

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