顎関節症の治療

顎を動かすと顎関節や周囲の筋肉に痛みが生じたり、雑音がしたり、さらに関節がひっかかって口が開きにくくなったりする疾患を総称して顎関節症と呼んでいます。

顎関節症を引き起こす原因

顎関節は次のような要因が複雑 に影響しあって発症すると言われています。

@関節円板のズレ・損傷など顎関節部の異常

A歯の咬合の異常

B咀嚼筋の緊張・けいれんなどの異常

C咀嚼筋を制御する神経機構の異常

D歯ぎしり、食いしばり、頬杖などの習癖による顎関節の持続的な過重負担

E精神的ストレス、心理的要因による咀嚼筋の過度の緊張亢進

Fその他全身的な不調・異常による筋の緊張・けいれんなどです。 

分類から言えばDに入りますか、最近特によく言われているのが咬み癖によるものです。片側でばかりで咬んでいると片側ばかりが過重負担になり、顎の動きも小さくて悪いものになってきます。特にテレビを見ながら食事をされる習慣のある方、いつも同じ席に座って食べていて、右ないし左ばかりを向いて食べていることはないですか?注意が必要です。

 関節雑音だけでは治療の対象にならないという先生もいらっしゃいますが、当院では治療の対象と考えています。というか、主訴が「関節の音が気になる」と言って来院されているのに「気にしないで」と言って帰す訳にもいきません。実際、5年間で自然にクリック(関節雑音)が消失した人が25.8%いる反面、5年間にクリックからクローズド・ロック(直訳すれば閉じて鍵がかかった状態・開口障害・口が開かない)に移行したものが19.4%という報告もあります(依田1996) 。 関節雑音が口が開かなくなる前駆症状である可能性は否定できません。20%と考えれば5人に1人しか悪くならないともいえますが、関節雑音を消せれば、消しておいた方がよいと考えます。

 当院での治療は最初に何歯分かのプラスティック製のミニ・スプリントを入れます。ミニ・スプリントは食事時以外はできるだけ入れてもらいます。夜間は必ず装着して就寝していただきます。1週間の内に軽快しなければ、長期戦と考え、上顎に全部の歯を覆う前方整位型スプリント(マウスピース)を入れます。このスプリントは夜間必ず装着して就寝していただきます。就寝時以外は入れておいてもいいですが、一般的には外します。週一回の来院で2ヶ月後に再評価します。

必ず直るかと言えばそうでもなくて、クリック(関節雑音)の改善率は74.5%、疼痛の改善率は79.8%の報告もあります。(Santacatterinaら1998)

治らない場合はそこで打ち切る場合もあれば、長期的にスプリントを入れてもらう場合もあります。前方整位型スプリントは上下全部の歯を咬ませますので長期使用が可能ですが、何歯かのみを咬ませるミニ・スプリントは他の歯が咬まないことにより伸びてきてしまう恐れがありますので、長期使用はありえません。ミニ・スプリントの効果がわかるのは2〜3日、せいぜい1週間までです。それ以上入れておいても意味がありません。どのスプリントも具合が悪ければ外せば、即元の状態に戻ります。

症状消失後にスプリントを除去してからの再発率について、Daviesらは3年後に10%、Le Bellらは4年後に43%、Lundhらは実に85%と報告しています。このように再発については報告によってばらつきがみられます。 再発は何でそうなるかを患者さんに理解してもらって、なるような習慣を生活の中から取り除いてもらえれば、ある程度防げる気がします。症状消失でOKと患者さんが元の生活に戻ってしまうのと、病気自体を理解してもらって再発防止に努めてもらうのでは結果としてばらつきがあるのは当然と言えば当然でしょう。

待合室窓際の花.jpg

待合室窓際の花です。

 

 

 

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