大相撲にトランプが来た。

週刊文春2019.6.13P113言葉尻とらえ隊 能町みね子

千秋楽を消化試合にしたのでは?/さすがに普段より値段が高く、かなりの金額だった 川内博史/門田隆将

 

 大相撲の千秋楽にトランプと安倍晋三が来ると言うことに、好角家の私は確かに怒っていました。ただ別に彼らが来ること自体が嫌なのではありません。政治的姿勢はともかく、他国の大統領に大相撲を見に来てもらえること自体は歓迎です。過去にもいろんな方が来られてますし。

 私が腹を立てているのは、安倍晋三が当然のように天覧相撲よりも上の待遇を求め、大相撲のルールを蹂躙してきたことです。升席に椅子を設置しろなんて論外。事前には、トランプのために日本相撲協会が正面升席を千席近く確保しているというとんでもない報道も出ました。首相自ら美しい国ニッポンの伝統文化をぶち壊しに行く姿勢は保守でも何でもなく、革命ですね(悪い意味で)。

 さて、このニュースは肝心の大相撲の内容以上に拡散されましたが、そのせいで大相撲に興味がない人も次々トンチンカンなことを言うため、私の好角家としてのソウルはさらに逆なでされました。

 まず江川紹子は、心ある相撲ファンがトランプにブーイングをするよう祈る、とツィート。相撲ライターを名乗る一部の方までこれに賛同していましたが、あくまであそこは力士が主人公の場です。異例の観戦形態によってただでさえかき乱されている空気を、その場にいる力士を無視したブーイングでさらに引っかき回すなんて、好角家として許しがたいことです。

 最もひどかったのは衆議院議員の川内博史。「千席のみならず、国技館全体にサクラを動員したのでは?バカらしくてやってられない、ということで関取達は14日までに勝負をつけて千秋楽を消化試合にしたのでは?と、誰かが言ってました」とツイートしましたが、純粋に相撲を観に来たお客までサクラ呼ばわりしたうえ、関取全員を八百長呼ばわりするという大問題発言です。政敵批判のためには大相撲など使い捨ての素材に過ぎないんでしょう。責任をかぶりたくなくて「誰かが言ってました」と放り投げるのも最悪。「誰か」じゃなくてお前が言ったんだろ、川内。

 もう一つオマケに、作家の門田隆将。桜井よしこらと千秋楽を観戦した、という記事で、彼はトランプが来るからあわてて観に行ったという態度を隠しもしない。そのことも好角家として苦々しい思いですが、彼は知人に升席を確保してもらった際に「さすがに普段より値段が高く、かなりの金額だった」としれっと書いています。正規のチケットなら、千秋楽だろうがトランプが来ようが同じ値段。「かなりの金額」ですから、やはり転売屋などを利用しているんでしょうか。堂々と書いちゃって、苦笑するしかない。

 とまあ、好角家の私としては心穏やかでない千秋楽となりましたが、ともあれ蓋を開けてみればトランプの近くにも一般客がいっぱい。私の知人もトランプが来るという報道の前から千秋楽の正面升席を手に入れており、何事もなく当日観戦していました。一体あの「千席確保」の報道は何だったのか?デマならデマで、しっかり事後に検証していただきたいのですが。

▲このページのトップに戻る