右脳と左脳と

「「新ヒトの解剖」井尻正二・後藤仁敏、築地書館、1996

P228ところで、最近、左右の大脳半球はやや異なった働きをしていることが明らかにされている。たとえば、言語をつかさどる働きは右の脳よりも左の脳で発達していること、逆に視覚によって物の形をとらえるのは左の脳ではなく、右の脳でおこなわれていることが分かってきた。そして、左脳は数学的・論理的・理性的な機能をはたす「ロゴス脳(論理脳)」であるのにたいして、右脳は芸術的・情感的な役割をつかさどっている「パトス脳(情感脳)」であるという。

 このことは、左脳に脳出血や脳梗塞がおこったばあいと、右脳にそれが生じたばあいをくらべると、よくわかる。つまり、右脳に障害がおこると、まわりの人とことごとく対立する「意地悪ばあさん」や「頑固じじい」になるが、左脳に障害がおきたときは、おっとりとした「ニコニコばあさん」「ヘラヘラじいさん」になる傾向がある。

 この点で、日本の学校教育は、どうも左脳の機能の開発だけを重視する傾向がつよく、右脳の発育をおざなりにしているきらいがあるといわれている。レオナルド・ダ・ヴィンチの名をあげるまでもなく、相対性理論を発見したアインシュタインがバイオリンの名手であったように、むかしから偉大な科学者は、芸術的にもすぐれた感性や技術をもつひとがおおい。左右の脳がともに発達していてこそ、ゆたかなパトスとすぐれたロゴスをもつ、人間らしい人間といえるのではないだろうか。

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