マニフェスト4題3 マニフェストで烏合の衆でなくなるはず・・

週刊朝日2003.3.28号P31「政界再編、こう仕掛ける」
 北川正恭三重県知事インタビュー
 僕は中選挙区の総選挙を4回経験しました。あれは徹底した利益誘導選挙だった。有権者の15%ぐらいの支持を得れば当選できるので、特定の利益集団の意向さえ踏まえれば勝てるんです。
 既成政党は、農協、医師会、労組といった既得権益を持った集団を足場にしてきました。右肩上がりの時代には、政党がそうした集団の利益を実現することは国民全体の利益にもつながると思われましたが、現在はそこに属さない人が増えたため、特定集団に寄りかかると、かえって全体の利益を損ねてしまいます。
 そこで個別利益を超えた「ビジョン」と、それに基づく「この国のかたち」が求められるわけですが、自民党は既得権益のかたまりだし、民主党も予算案を独自に出すなど努力していますが、やはり外に開かれた政党になりきれていない。
 となると、もう一度、政界再編で新しい政党をつくり出すしかありません。そのための「道具」として僕が提唱しているのが「マニフェスト(政策綱領)」です。
 マニフェストは各党が目指す政策を「期限」「財源」「数値」付きで明示し、政権を握ったら実行することを有権者と「契約」します。選挙に勝った政党は、国民からその政策が明確に支持されたわけですから、政治力は高まるし、逆に政策遂行に失敗すれば言い訳はできません。
 英国のサッチャー政権が導入して以来、このシステムの有効性は広く認められてきました。しかし、明確な約束などしないほうが政党は楽なので、日本では見向きもされなかった。
 そこで「ローカル・マニュフエスト」から始めようと考えました。4月には統一地方選があります。国政選挙でいきなり導入できないのなら、まず知事選の候補者たちにマニフェストを出して戦ってもらう。その過程を通じてこれが国民に認知されれば、次の総選挙で各政党は国政版のマニフェストを出さざるを得なくなる。
 幸い、この趣旨に賛同してくれる知事選候補者が5、6人いそうです。民主党も次の総選挙までにマニフェストをつくると言っています。そうなると自民党もつくらざるをえないでしょう。
 これを導入すると政党は数合わせの離合集散ではなく、理念でまとまっていかざるをえません。選挙の性格も変わります。各候補者が地元の事情に応じて政策を都合よく解釈できなくなります。
 有権者側の意識も変わります。情報公開が進み、マニフェストが導入されると、どの政党を選ぶかは国民の責任にゆだねられます。政党の失敗はそれを選んだ国民の失敗になる。マニフェストを使うことで日本の政治は質的に変わらざるを得ないのです。
 4月には2期務めた知事職を離れて東京に移り、自由な立場で政治をつくり変える運動をしたいと思っています。
 政界再編で、政党はタックスペイヤ−の政党とタックスイーター(税の消費者)の政党に分かれるでしょう。
 僕は、自分を中心とした政党をつくりたいとは思いませんが、タックスペーヤ−のための外に開かれた政党ができたら、その一翼を担う覚悟はあります。戦後復興を担った政党が持っていたような熱気、時代を転換させられる振幅の大きなエネルギーを取り戻し、いまの日本の閉塞感を打ち破りたいのです。

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