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2000.10.19週刊文春P90読むクスリ
守破離三十年
 「我が家には、先祖から伝えられてきた家訓が三つあります」
と東京・新橋に百七十年続く老舗の天ぷら店『橋善』の常務取締役、橋本欣也さん(五十六歳)。
江戸後期に初代善吉が橋のたもとの屋台で天ぷらを揚げ始めたのが、店の名の由来だ。

 「その一つは『守破離三十年』です」
 守破離とは、主として剣道で、修業上の段階を示すのに使われる言葉。
 初めは、師や流派の教え、型、技を確実に身につける。これが「守」だ。
 次の「破」の段階では、他の師や流派の教えを研究し、よい方向へ発展していく。
 そして、特定の派から離れて、独自の新しいものを確立する。すなわち「離」だ。
 「それを我が家の家訓では、守、破、離、それぞれに十年ずつ割り振り、合わせて三十年にしているんです」
 つまり、最初の十年間は先代の教えを徹底して守り通す。
 次の十年間は、自分で研究し、好きなようにやってみる。
 そして最後の十年間は、それらをすべて見直せ、というのだ。
 「私は中学生のころから、親父に天ぷらの揚げ方を教えられました」
 父定善さんは四代目『橋善』にあたる。亡くなった今は、母秀子さんが五代目を継いでいる。
 次男の欣也さんは慶応義塾大学法学部を卒業して店に入った。
 「ですから親父に本格的に鍛えられたのは二十二歳からですが、それからの十年間は、それは厳しい『守』の時代でした」
 初めの一年間は、来る日も来る日も豆腐ばかり切らされる。いい加減に切るのは許されない。橋善流の形と大きさにきちんとそろえなければならない。
 「親父は決して、ああしろ、こうしろ、とは教えてくれません。頭や言葉で覚えるんじゃない。親父が切っているのを見て、からだで覚えていくしかないんです」
 豆腐がすむとコンニャク。これがまた一年間。
 「それができるようになったら、じゃ刺身を切ってみろ、となるんです」
 やっと天ぷらを揚げさせてもらえるようになったのは、四、五年経ってから。
 揚げてみろ、といわれ、喜び勇んでやるのだが、中学生のころ半ば遊びで揚げていたのとは違って、ぜんぜん天ぷらにならない。
 「エビにコロモが付かないんです。何度やっても空揚げになっちゃう」
 父は、違う、というだけで、何も教えてくれない。仕方がないから、父がコロモを作るところから、そばでじっと見ている。
 そのうち、小麦粉と卵と水を、こくらいの比率で混ぜるのだな、とわかってくる。
 「その混ぜ方も、だらだらではなく、さっ、と瞬間的にやらなくてはいけないんです」そうやって作ったコロモを、手早くエビにからませて油に入れる。
 「このからませ方がむずかしくて、そこに橋善の流儀があるんですね。それを覚えて身につけるのに四、五年かかりました」
 欣也さんの揚げた天ぷらがようやく客の前に出されるようになったのは「守」の十年も終わりに近くなってからだった。
 「破」の時代に入ったのは三十三歳になるころ。
 「もう父はなにもいわず、好きなようにやらせてくれました」
 伝統の味を時代に合わせて生かしていくには、どんな材料を使い、どう揚げるのがいいのだろう、と自分で考え始める。
 料理の先生につき、魚河岸で仕入れるエビから、コロモに使う卵や小麦粉まで、あれこれ使い比べてみることもした。
 「エビだけでも三百種類ぐらい買い、味はどうか、ウチの天井の汁に合うかどうか徹底的に調べ、データにしていきました」
 味の模索を続けるうち、あっという間にまた十年が経つ。
 最後の「離」の時代に入った四十代の半ばから五十代にかけて、橋本家の家訓によって過去の二十年間を見直した欣也さんは、そうか、とうなずくことが多くなった。
 「あれか、これか、と材料や技術の勉強をしてきたつもりだけれど、結局今のおれは親父と同じ材料を使い、同じやり方でやってるじゃないか、ということに気が付いたんです」
 エビも、小麦粉、卵、油も、いつの間にか父が使っていたのと同じ材料に戻っている。
 父を越えよう、とあがいているうちに、父のところへ帰ってきてしまったのだ。
 「きっと親父もね、先代を越えてやろう、と思ってあれこれやりながら、気が付いてみると元へ戻っていたんじやないでしょうか」
 その“元”とは、つまり老舗の原点の味のことだろう。
 橋善の天ぷら、とりわけ看板の天井の味は昔から変わらない、といわれる。
 しかし正確には、変えようとしているのだが変えられない、というべきではないかと欣也さんは思う。
 「私にとっての守破離三十年は終わりました。次は若い人が、一から始める番ですね。そのときに味が変わるかどうか、楽しみです」
天下の戦を語るな
 橋本家の第二の家訓はこうだ。『我 仏 隣宝 嫁姑 天下の戦 好き嫌い』
 われ、ほとけ、となりのたから、よめしゅうと、てんかのいくさ、すききらい、と読む。
 読み下してみると、五七五七五のリズムがあって、覚えやすい。
 「商いをするにあたって、客と話すときに触れてはならないことを教えた言葉です」
我。商人は自分のことを客に話すような出すぎた真似をしてはならない。
 仏は宗教のこと。客がどんな宗教を信じているかわからないから、うかつに話題にしてはならない。
 「ただ、先祖を大事にしています、とは言ってもいいことになっています」
 先祖を粗末にするような宗教はないからだ。
 それに、ついでに言ってしまうと『先祖を敬う』のが橋本家の第三の家訓になっている。
 隣宝。他人の財産を意味する。
 「あの家はお金持でいいね、などと言わないことです」
 嫁姑。
 「うちの嫁はだらしなくて、子供のしつけもろくにできない」
 お姑さんが店主の前でこぼす。
 そんなとき、古くからのお得意さんだから、とうっかり相づちを打ったりしてはいけない。
 「それをやりますと、お姑さんは家へ帰ってお嫁さんに、あそこの店主があなたのことを、だらしなくて子供のしつけもできない、と言っていたわよ、と話します」
 お嫁さんは店主を恨み、店の評判が落ちることにつながる。
 嫁姑の間には決して立ち入らず、知らん顔をしておくことだ。
 天下の戦。
 官軍といい、賊軍といっても、どちらの贔屓(ひいき)も店のお客にはいる。どちらの悪口も言わないこと。
 現代にあてはめれば、政治の話はするな。
 欣也さんは法学部政治学科の卒業なので、
 「政治には非常に関心があり、今でも勉強していますが、お客様の前ではただ、私どもにはむずかしいことはわかりません、と受け答えしています」
 好き嫌い。
 「あの車が好きだとか、このタレントは嫌い、なんて言っちゃいけません。お客様の中には、まったく逆の考え方をなさる人もありますから」
 客を嫌な気持にさせたり、角を立てたりして、いいことは何もない。
 「この家訓を守っていますと、聞き上手になるんです。その点にかけては、私は人に負けないと思っています」

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