全部ヒットさせようというのはダメ!

全部ヒットさせようというのはだめだ舟木一夫
週刊朝日2002.8.16−23P58マリコのここまで聞いていいかな
舟木一夫

(前略)

林 そうだったんですか。7年ぐらい前、私がホテル・ニューオータニの中を歩いてたら、舟木さんがお茶を飲んでらしたんです。「ワッ、舟木一夫よ!」って、ガラスに手を押し当ててのぞいたら、「寒い時代」を過ごしてきたとは思えないぐらい颯爽としていて、男盛りの魅力にあふれていて、あの写真週刊誌の印象とはあまリにも違っていたので、びっくりしました。
舟木 その時期というのは、自分がどの方向に行けばいいのか、ピントが完全に合っていて、この1点に向かってレースを始めて1、2年という時期だったと思います。ただ、本人3分の1、スタッフ3分の1、お客さん3分の1、この三つのバランスがとれてないと、汽車は走らない。どれが負けても、形は崩れていきますよね。スタート時点では、スタッフのパワーで半歩行くか、本人がいきなり行くか、という話があるわけですね。そのバランスがとれれば、あとはすっと行くんです。
林 お話を聞いてると、経営論を聞いてるみたいな感じで、すごいですよね。ちゃんと自分も時代もわかっていらっしゃって。
舟木 下積みがないというのが僕のいちばんのウィークポイントなんだけど、そのぶん、「寒い時代」があった。おかげで、山のてっぺんにばかりいてはわからない景色や風、谷底ばかりにいてはわからない景色や風、僕はその両方と出合うことができたから、頂点に立っているときの怖さと、谷底にいるときの怖さの違いがわかるんです。
林 でも、芸能界って、谷底に落ちたきり這い上がれない人って、いっぱいいるわけですよね。

舟木 たとえば、100のところにいた人が、うまくいかなくなって70のところに移ったときに、90の場所はないかと探すよりは、なぜ100が70になったのかを考えていたほうが、時間をおいて90のところが見つかる気がするんです。そのとき一喜一憂して動いてしまうと、芳しい答えが出てこないことが多いような気がしますけどね。
林 そういうものですか。
舟木 春夏秋冬どの季節に咲いてもきれいな花ってないと恩う。僕らの仕事も同じで、流行歌手の場合、年じゅう人の目に触れていたい、出す歌、出す歌、全部ヒットさせようというのはダメだと思うんですね。
林 私たちの仕事と同じですね。出す本、出す本、みんな売れてほしいと思いますけど、そんなにうまくいくわけなくて、それで落ち込んだりしちゃうんです。

(後略)

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