日本人の肉食 魏志倭人伝における喪中肉禁忌

魏志倭人伝における喪中肉禁忌、歴史の中の米と肉、原田信男、平凡社選書147、1993
(p100)
 三世紀に成った『魏志』の倭人伝に、耶馬台国の記述として次のようにある。

 始め死するや停喪十余日、時に当りて肉を食はず、喪主哭泣し、他人就いて歌舞飲食す。・・・その行来・渡海、中国に詣るには、恒に一人をして頭を梳(くしけづ)らず、蝨(きしつ)を去らず、衣服垢汚、肉を食はず、婦人を近づけず、喪人の如くせしむ。これを名づけて持衰(じさい)と為す。

 この記述は、弥生晩期における倭人の風俗として、服喪中には肉を食べないという禁忌が、すでに存在していたことを物語っている。その理由を〃穢れ〃的なものと考えるか否か、についての間題は残るが、服喪という特殊な事例であるにせよ、一時的にも肉食を忌む伝統が、非常に古くからあったことに注目しておく必要があろう。この耶馬台国におけるような服喪中の肉食の禁忌が、大化の改新期から天武・持統期に見られる農耕期間中の「酒宍の禁断」ヘと、呪術的な要素として受け継がれたものと思われる。

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