産業革命当初英国で平均寿命15才の都市が出現

「病気の社会史 文明に探る病因」立川昭二、NHKブックス、1971

P117「産業革命当初、疲れを知らない機械のもとに無制限労働の時代が続き、エンゲルスが本書を書いた当時、イギリスでは表向き労働時間一二時間であり、それが一〇時間にまで短縮されたのは一八四七年のことである。さらに、夜寝る必要のない機械のために、夜間労働という新しい制度が強いられていった。」

 幼年労働、婦人労働の問題が起きる。産業革命は人口の都市集中を巻き起こし、都市設備を追い越し、スラムを形成する。工場が黒煙地帯をつくり、大気汚染を引き起こす。スラムには非衛生な衣食住がある。

P128「もとより貧困につきものの無知・非行・犯罪、それに性的放縦や売春などの道徳的頽廃などが一方に蔓延し、こうした社会的病気と肉体的病気との相互関係も無視できない。さらに正当な医療を受けられない貧民が安直に服用する有害な売薬によって身体を損なっている事実さえあらわれている。そしてとりわけ労働者の健康を悪化させる重要な条件として、飲酒癖がある。一八五〇年、マンチェスターには四〇万の住民にたいし、一六〇〇軒の酒場があったという。」

P129「さらに戦慄すべき平均寿命の数字を伝える。

 「リバプールでは、一八四〇年には上流階級(紳士階級、自由職業者等)の平均寿命は三五才、商人と上層手工業者のそれは二二才、労働者、日雇労働者および僕婢階級一般はわずかに一五才にすぎなかった。」

 この平均寿命一五才という数字は、主として労働者の子女の死亡率の高さに起因している。五才以下の乳児死亡率を比較すると、「上流階級の子供たちは、わずかにその二〇パーセント、田園地方の全階級の平均では全体の三二パーセント弱が死亡しているにすぎない」のに、「マンチェスターでは労働者の子供の五七パーセント以上が五才未満で死亡している」のである。生まれながらの虚弱な体質、劣悪な生活環境、家族の過重な工場労働、これが都市労働者のあいだに生まれた幼い命を容赦なく奪っていき、その結果が平均寿命一五才という恐るべき数字となってあらわれたのである。」

(本文中の引用はエンゲルス「イギリスにおける労働者階級の状態」1845からで、訳文は新潮社版「マルクス・エンゲルス選集」第二巻の武田隆夫訳に拠るそうです。)

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