植物は味覚を持つグルメ

植物には目があり、木は会話する
週刊文春2001.6.14P86
読むクスリ、上前淳一郎

味覚を持つグルメ
 「目、つまり視覚だけでなく、植物は人間と同じように五感すべてを持っている、と私は考えています」
 五感とは、視覚のほか、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。まず聴覚。中国雲南省に生えるマイハギという高さ一メートルほどの小木は、
 「少数民族タイ族の少女が合唱を始めますと、先端部の葉が、まるで歌に合わせて踊るように動きだすのです」
 先端部の二枚の葉が、モーターで回るみたいに、右から左、左から右へと回転運動をする。
 少女の合唱だけでなく、携帯電話の着信音でも舞いだす。
 「マイハギが音を聴いて踊ることは、唐の時代から書物に記されています。肉眼で観察できるこのリズム運動が、どういう仕組みで起きるのか、いまだに解明されていない謎です」
 農作物にクラシック音楽やハードロックを聴かせる〃サウンド農法〃が、最近は日本でも採り入れられている。「スピーカーで大きな音を聴かせますと、その刺激で気孔が開いて肥料の吸収効果が上がったり、特定部位の生長が促進されたりするのではないか、と考えられています」
 嗅覚。谷田貝先生の『木は会話する』の講義を思い出して下さい。
 毛虫に食われた柳は、揮発性の物質を飛ばす。
 すると周辺の柳はその匂いを嗅いで「毛虫に気を付けろ」という情報をキャッチし、防衛態勢を敷くのでしたね。
 つまり、植物には嗅覚がある、といっていいだろう。
 「では、植物の〃鼻〃はどこについているのか、ということになりますが、葉の気孔がそれに当たるのではないかといわれています」
 葉の気孔を通じて植物は炭酸ガスや酸素を吸ったり吐いたりしているが、ここに動物の鼻に相当する機能が隠されているのかもしれない。
 触覚、味覚。植物の若い根には敏感な触覚があって、石や岩を避けながら伸びていく。キュウリやアサガオのつるも、触覚で周囲を確かめては、上へ上へと伸びる。オジギソウは手で触れると葉を閉じ、うなだれてしまう。
 「虫や草食動物からおいしそうに見える葉っぱを隠すのです。触覚で反応するオジギソウは、マメ科の中でもっとも進化しているとされています」
 ハエトリグサやモウセンゴケは、虫がやってきたことを触糸で感知し、捕まえて餌にする。
 モウセンゴケの触糸はすぐれたセンサーで、風で飛んできた小枝や、実験用のガラス棒には反応しない。
 「ところが、肉片や毛髪など窒素分の混じったものが触れると、素早く捕らえて食べます。ちゃんと味覚を持ったグルメなのですよ」

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