植物には目がある

植物には目があり、木は会話する
週刊文春2001.6.14P86
読むクスリ、上前淳一郎
植物には目がある
 「植物には目があって、赤と緑色を見分けることができます」
と農林水産省林野庁の監査室長、平野秀樹さん(四十六歳)。南アメリカ原産で、世界の温帯に広く分布するスベリヒユという草がある。日本でもありふれた雑草だ。
 茎は地をはって伸び、先のほうで立ち上がる。葉は楕円形で肉厚。
 「一九九○年のこと、イスラエルの生態学者ノボプランスキーらが、このスベリヒユを使って実験をしたのです」
 赤と緑色、二つのプラスチック製ブロックを、近くに置いてみた。するとスベリヒユは、赤のブロックにはお構いなく、その上を覆うようにどんどん生長していく。「ところが、緑色のブロックは避け、何もないほうへ枝分かれして生長したのです」
 緑色のブロックにぶつかる前に避けた。だから触覚を働かせたのではなく、明らかに緑色を手前から認知したのだ。
 「なぜそういうことができるか、といいますと、植物は光の波長を感知する色素を持っているからです」
 この色素はフィトクロム(植物色素)と呼ばれる。緑色の物体のそばでは赤色の光が弱くなるのだが、それをフィトクロムはキャッチする。
 「このフィトクロムの反応によって、枝分かれが制御され、緑色のブロックがないほうへ生長していくのです」
では、なぜ植物にはそういうメカニズムが備わっているのだろう。「それは、お互いにぶつかったり、葉が重なり合ったりしますと、生長に悪い影響が出るからです。そうならないように、お互いに緑色のものを避け合っているのです」
 建物の壁にからまっているツタの葉を見て下さい。びっしり茂っているようで、重なり合うことなく、隣の葉とは適度の間隔を保っている。
 「葉っぱどうしが目配りしながら、隣近所の葉を避けて共存共栄しています。すごい知恵ですね。」

▲このページのトップに戻る