植物は時に闘争もする

植物には目があり、木は会話する
週刊文春2001.6.14P86
読むクスリ、上前淳一郎

ときに闘争も
 「一方で植物は化学物質を分泌することによって、生き残るための激しい戦いを他の植物との間でやっています」
 新しい造成地ができたようなとき、ブタクサがびっしり生えて占領してしまうことが多い。
 北アメリカ原産の帰化植物で、背丈一メートルほどのキク科の一年草。
 花粉を風に乗せて飛ばすので、花粉症の原因になる憎まれものだ。
 「ところがブタクサの天下は一、二年で、同じ北アメリカ原産の帰化植物であるセイタカアワダチソウにやられてしまいます」
 こちらは背丈一・五メートルから二メートルにもなるキク科の多年草で、やはり群生し、秋に黄色い花をつける。
 「これがどうやってブタクサを駆逐するかといいますと、ほかの植物の発芽や発育を抑える化学物質を、根から分泌するのです」
 この物質が地中に浸透していき、ブタクサを枯らす。
 ほかの植物の種が風で飛んできても、発芽できない。そうやってセイタカアワダチソウは戦いに勝ち、ひとりはびこっていく。
 「しかし、そのセイタカアワダチソウも、数年で姿を消します」
 あとにはススキやチガヤ、クズが生えてくる。いつたい、なぜセイタカアワダチソウは滅んだのか。
 「他の植物を締め出すために分泌した化学物質があまりに強力すぎて、自分自身の生長まで抑えてしまったのです」因果応報は、植物の世界にもあるのだ。
 オーストラリアでコアラが好んで葉を食べるユーカリ。これは強い。ユーカリ林の中では、雑草の生長が悪くなる。
 「〃石油がなる木〃といわれるほど油分が多く、シネオールという揮発成分を空中に放出して、これが地中に蓄積されるため、ほかの植物の生長が妨げられるのです」
 となると、こうした強い植物の化学物質を柚出して、畑の雑草を退治する除草剤に使う期待が持てる。これも人工的な薬剤ではないから、土壌を汚染する心配がない。「そういう研究が始まっています。植物の行動を理解することで、人類にとっての夢はどんどん広がっていくのですよ」

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