三木成夫先生はシェーマの天才、話術の名手

(院長註)シェーマは一般の方には馴染みの薄い言葉かもしれません。ちょうど生命形態学序説P22に解説が出ていましたので、付記します。スケッチのようなものと考えてもらっていいと思います。

「『シェーマ』はギリシア語のshema=form,figure,fashion,characterに由来する。画家が外貌のイメージをキャンパスに画像として固定するように、解剖学者は構造のイメージを黒板にシェーマとして残す。」

 

「生命形態学序説」三木成夫、うぶすな書院、1992、PX

序 文
 「解剖学anatomia」と「形態学Morphologie」はしばしば混同されています。が、両者は本質的に違う学問です。どのように違うのでしょうか。それをまず本書によって学んでいただきたいと思います。しかしそれだけではありません。ここでは「生き物の姿一時空を超えた形」について、これまで誰もなしえなかったほどに深く洞察されています。だから本書の内容は、単なる「解剖学」でもなければ「形態学」でもないのです。それは、固有名詞をつけてまさに「三木学」とでもいうほかありません。
 次に強調しておきたいことは、本書の後ろに著者の自筆になる原図がつけられていることです。 これを目にして、すべてを理解できないとしても、感動しない人はいないと思います。自著の原図をこれだけ高いレベルで描くことのできる人は、過去現在、洋の東西を問わず、まだ寡聞にして他に知りません。天才と呼ばれることを、著者は生前に嫌われていましたが、あえてここでそう呼ぶことを許していただくことにします。実兄三木照也氏の回想によりますと、著者は小学校四年生にしてすでに唐時代の書家虞世南の書法をものにされていたそうです。これほどの才能をもって、なおかつ身を削るような精進を続けて描かれた原図から、どうかその真意を汲みとってください。
 著者は、また稀にみる話術の名手でもありました。聞く者の胸深くしみとおるような語りに、人々は深い感銘をうけたのです。他界されてからすでに5年たちました。もはやその謦咳に接することはできません。 しかし今ここに装いをあらたにして遺著が世に出るのはまことに喜ばしいかぎりです。これは書肆の熱意によることはもちろんですが、旧著を見直して誤植などを改め、かつ詳細な原図の説明をつけられた後藤仁敏博士ほか、ころろある人々の協力によるものです。これらの方々に、ここで感謝の意を表するとともに、現代科学技術社会の流れのなかで一人でも多くの読者が「三木学」を体得されんことを切実に願っています。
平成四年夏、エンジュ(槐)の花を仰いで。              平光試i

生命形態学序説の表紙の挿絵より

表紙のシェーマ.jpg

▲このページのトップに戻る