アメリカを見習うな!

アメリカを見習うな!成毛真MS前社長
週刊文春2000年7月20日号P48、私がマイクロソフトを辞めた本当の理由

(院長註)2000年7月に「新世代ビジネス、知っておきたい60ぐらいの心得」成毛真、文春ネスコという本が出ました。その宣伝を兼ねたインタビュー記事のようです。プロローグが「私がマイクロソフトを辞めた本当の理由」、第8章が「アメリカを見習うな!」と題されています。

(前略)
  マイクロソフトの営業郡長時代は、接待もバリバリやってましたよ。でも日本型接待では意味がない。重要な取引先と年に何回か食事するだけでは『先週会ったの誰だっけ』と、まったく覚えてない。だから食事のあとには何軒もハシゴして朝四時まで連れまわす。しかもなるべく平日にです。相手は電機メーカーなどお堅い企業だから、翌日は朝から出社で、死にます(笑)。そうすると二年くらいは忘れないね。『いやあ、あのときは凄かった。また行きましょうよ』とずっと言ってる。かなり体育会系でしたね。でも接待もトコトンやってみたら飽きました(笑)」
  社長に就任した日に元上司のクビを切り、会長に昇格した前社長・古川享氏(現マイクロソフト米国本社副社長)の経営をすべて逆張りした。
  〈前の君主がやっていたことと正反対のことをやれ、ともマキャベリは書いている。そこで私は100パーセント外資系になることを決意した〉「私はマキャベリの『君主論』が好きなんですが、そこに書かれている、『前の王の大臣全員の首を即刻はねよ、しかし翌日からは絶対クビをはねるな』という部分に、いたく感銘をうけたんです。ジワジワと首切りを進めると、次は俺か、と疑心暗鬼でやる気がなくなる。だから、一発でガンとやる。そのかわり、残った社員は身分をセキュア(保証)する。人を叱るときも同じです。
  前社長の古川さんがやってきたこととすべて正反対にしたのも、マキャベリが書いていたからです(笑)。前の経営を踏襲すると、社員がどっちを向いたらいいか、わからなくなる。細かいところまで変えると、『ああ、社長は本気なんだな』と、みんな諦めて言うことを聞くんです(笑)。踏襲しないほうが悪いところも直せますよ。
  古川さんは、けっこう賢い人だからね、何も文句を言いませんでした。一年くらいミーティングにも来なかった。でも実際のところ、鬱憤はたまったでしょうね(笑)。後任の阿多(親一)社長にも『トイレのティッシュに至るまで全部ひっくり返せ』と言っていますが、あいつは、これでいいと言ってなにも変えないんだよなあ(笑)。

「衰退産業」こそ日本の宝

  このマキャベリ流「逆張り精神」は、本書にも随所に藩れている。〈アメリカを見習うな!〉〈株式上場のメリットを疑え!〉〈国産自動車メーカーは一社で十分?〉〈「哀退産業」こそ日本の宝〉と、意外な目次ばかりなのだが、この精神が本書執筆の動機でもあった。
  「東大で若い学生たちと話をする機会があった時に、『会社や社会はこんな逆の見方もできる』と説明すると、みんな本気で目がテンになってるんですよ。
  『危うく○○重工に就職するどころでした』とか、『高校のときに聞いてれば』とか話しかけてくる。だから、若い人に、社会には裏の読み方もあるし逆張りもできる、と言いたくなったのがこの本を書いた理由ですね」
  たとえば、第七章「フェアじゃないアメリカ」では日米どちらの構造が悪いという論議をする前に、世界でアメリカだけが異質だと気づけばいい、と説く。「経済同友会でも、ぼくら40代と、60代では意見がかなり違う。驚くことに、六十代の経営者に『自由競争至上王義でやれ』という人や、『それは行き過ぎじゃないの?』という声が多く、四十代のほうが『こんな馬鹿げたアメリカ式の完全自由競争主義を導入したらヤバイよね』ど懐疑的です。六十代の経営者は、本質的な競争を知らないけれど、40代はベンチャーや外資の経営者が多く、厳しい競争にさらされているからです。
  アメリカの競争は、死のリスクがある戦争と同じで、若いうちは面白いけど、40歳を越えると、殺し合いはもういいやと思ってしまいます。特に日本は高齢化していくから、アメリカ式競争には参加しないほうがいい。
  今のアメリカは絶好調だから、勝者の情報しか入ってこない。アメリカには最低賃金労働者が日本の二倍いたり、どの大都市でもホームレスが十倍いるなんて日本人は全然知らない。
  アメリカは、自分たちが百パーセント正しいと威張って、他のやつらはマヌケと思っているから、日本を『同族主義』とか『ケイレツ』と言って批判するけど、よく考えてください。ほんとうは、アメリカ以外の歴史ある国は、全てそういうシステムです。
  アメリカだけが異質なんですよ。だから、アメリカを見習う必要なんてない。日欧亜でアメリカをなんとかすればいいんです」
  森内閣が掲げる「IT戦略」にも成毛氏は手厳しい。「日本のIT戦略で、『アメリカ並みに通信料金を下げろ』という経営者の主張は噴飯ものですね。だって、アメリカの五年前の料金体系にしても、五年前の商売が輸入されるだけで、新産業は起きない。アメリカに追いつこうとしている限り、未来永劫勝てない。
  だから、常に新しいことをやらなくちゃ。アメリカが全家庭に1メガバイトの通信回線を引くなら、日本は10メガとか100メガ引くとか。スピードが極端に上がれば、そのコストを吸取しようとして、アメリカにない面自いサービスやソフト、事業が出てきますよ。
  IT政策では、韓国のほうが思い切りがいいですね。アジアは全体に好調ですが、日本はボーッとしてる。結局、今のIT戦略は、産業育成のための政策ではなく、また公共投資したいだけなんです。利権構造はまったく変わらない。その辺の危機感を持っている財界人は、牛尾治朗さん(ウシオ電機)くらいかなあ」。
(略)
  十二歳になる娘さんへのユニークな教育法。学校の試験がくだらない、と怒った成毛氏は、テストの問題を一つ一つ逆採点。「こんな設問のテストは零点満点だから、点をとれなくてもいい!」と娘に宣言した。
「子供は数学だけ本気でやればいいんです。数学ができないから、日本の工学が駄目になってきています。数学は発想の練習があるでしょう。あっという閃きが必要。その柔軟さがないから、『とんだべンチャー』が出てこないと思う。
  今の子供は、僕らに比べたら情報を得る方法が二十倍はある。すると、必要な情報といらない情報の区別がつかなくなってくる。
  それを切り分ける技術にインターネットを使えばいい。インターネットは、『覚えなくてもいい』という素晴らしさがある。調べればわかるんだから、本当に重要なことは他の部分にある、とわかるでしょうから」

 

(院長)社会保障の分野でも先進国の中で、唯一国民皆保険のない、介護のシステムもほとんど機能していないアメリカは異質です。

  12年前に韓国はやはりがんばっていたんですね。日本はボーっとしていたというのが・・・。

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