考えろ、とにかく考えろ 権丈善一先生

慶応義塾大学の広報誌「塾」2011AUTUMN NO272 P13半学半教

先生の専門……本当のところよく分かりません(笑)。
たぶん、世の中で生きていくために必要な事全部を学んでいます。現在、学生数は25名です。

「考えろ、とにかく考えろ」 
権丈善一 商学部 教授
 よくよく考えないと危ないーそれが、四半世紀ほど、経済学をツールとして社会保障を分析し、論じてきた実感である。
 これまで私は、研究者そのものが、問題の解決者というよりは問題の原因である事例を数多く目の当たりにしてきた。むしろ、あなたがいなかった方が世のため人のためであったはずと言いたくなる研究者、特に経済学者や政治学者がいかに多いことか。政策論という国民の生活に密着する研究領域の場合、間違えたら、たちどころに人々を不幸にしてしまう。後になって、間違えましたで済む話ではない。
 かつて、福澤諭吉が、是非判断の分別がつかない者が政治経済を学ぶことを、「その危険は小児をして利刀を弄(ろう)せしむるに異ならざるべし」と論じていた意味が、年を経るほどに分かるようになってきているのかもしれない。
  これまでは、考えに考えて私か論じてきたことは、その後に起こった出来事と照らし合わせてみれば、なんとか大きな間違いはしていなかったような気もする。しかしそれも、学問半分、運とも言える直観半分くらいのきわどい思索の結果であるような気がしないでもない。
 そうした私が、義塾で半学半教の身でいることができる年数は、まだ17年近くもある。これから研究生活を終えるまで、大きな間違いをしないで済むことがはたしてできるのか。晩年になって、結局、私は研究者として世の中に存在しなかった方が人々は幸せだったのではないか、と反省しなくても本当に済むのか。
 自分の論は自分で責任をとるしかないと腹を決め、既存の学問すらあてにせずにひたすら自分で考える、というのが私の昔からのやり方である。「僕の仕事は考えることだよ」と学生に話す私は、彼らに「自分で考えろ」「考えろ、とにかく考えろ」と言うのが、いつもの口癖らしいー他にもいろいろあるらしいが(笑)。

「権丈先生に師事したい!という熱い想い」
酒井絵理 法学部法律学科3年
 ゼミ選びに悩んでいた私は、ある日商学部のWebサイトで、書かれていることが頭の中にス〜ッと入ってくる面白い先生を発見!そういう私は、法学部法律学科の学生。本を手にしてみると、難しいはずの財政や社会保障の話が「要するにこういうことだろう」と軽快なテンポで…。一気に読み終え、この先生に師事したいと想い、このゼミに飛び込みました。
 「僕の言うことをあんまり信用するなよ」「ちゃんとするな、ふらふらしとけ」と指導をされる先生ですが、本当は、学生や学問へのほとばしる熱い情熱を持っておられる恥ずかしがり屋さんだということを、ゼミ員一同分かっています(笑)。「僕は脱力系だから」という先生にならい、ゼミ生みんなが、世の中をちょっとばかり斜めから眺める生き方を日々楽しく学んでいます!

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