口呼吸について再び

  たかが週刊誌とあなどるなかれ。昔、「歯無しにならない話」(1984)「患者のための歯科のすべて」(1987)という本が朝日新聞社から出版されました。当時の超一流と言われた歯科医師にていねいに取材されたその内容の充実度に驚かされました。内容的には少し古くなりましたが、歯科の学生さんが歯科について全体像を掴むにはこういった本から入った方がいいかもしれません。今、Amazonで調べたら中古が¥1からになっていました。別に郵送料が取られますが。その頃から何十年と知識と情報の集積は続けられています。担当者の知識も相当なものになっていることでしょう。

  噛み癖について理解されている歯科医師はそう多いとは思われません。それでもこれだけ繰り返し載せられています。恐るべし朝日編集部。

 

 「口呼吸やめれば美人になれる」

  2001.3.23週刊朝日P140

  リウマチ、アトピー、ぜんそくなど、「すべての免疫病は口呼吸が原因で起こる」。

  本誌昨年12月22日号の記事は大反響を呼んだ。ところが、「口呼吸の恐怖」はそれだけではなかった。出っ歯、目のたるみ、タラコ唇、シミ、シワなど、美人からどんどん通ざかる原因にもなるというのだ。
ほおづえをついてテレビを見るのは禁物だ
  「あなたは口呼吸をしていますね。だから出っ歯で、唇がたるんでいるんです」
  東京大学医学部口腔外科の西原克成講師は、記者の顔を見て容赦なくこう言い放った。
  えっ、でも、どうして口呼吸が出っ歯を引き起こすの?西原講師によると、原因はどうやら、口呼吸の人の食事法にあるらしい。
  人間は食べ物をのみ込むとき、唇を閉じて口の中の圧力を下げるのだそうだ。ところが、口呼吸をしている人は、食事のときも常に唇が開いているから、口の中の圧力を下げるために無意識のうちに舌で上の歯と下の歯の間をふさいでしまう。このとき、舌は歯に四十〜六十グラムの圧力を加えているという。
  「歯というのは、咀嚼運動のように縦方向から加わるカには五十キロ程度まで耐えられるが、横から加わるカには弱い。たった二十グラムのカでも、絶えず横方向から圧力を受けていると、歯は少しずつ動いてしまうのです」(西原講師)
  つまり、口呼吸をしている人は、食事のたびに舌で前歯を押していることになる。話をするときや、唾液をのみ込むときも同じ。結果、出っ歯になるという。
  なるほど。でも驚いてはいけない。ロ呼吸で影響を受けるのは歯並びだけではないという。
  「口呼吸では、鼻から上の〃表情筋〃を動かす機会がなくなります。すると、目がたるみ、小ジワが増える。口を閉じないでいつもポカンと開けているので、下唇は緊張感がなくなり、上唇に比べて厚い〃タラコ唇〃になる。口呼吸では十分な酸素が吸えないので、体じゅうが酸素不足になって皮膚が黒ずみ、シミも増えます」
  口呼吸を続けていると、こんな末恐ろしいことになってしまうのか…・。
  さらに追い打ちをかけるのは、西原講師が口呼吸が原因という片側噛みだ。「口呼吸をする人は歯並びが歪み、連動してあごの形も歪んでくる。すると、多くの人が片側噛みのクセを伴うんです」(西原講師)
  人には利き手があるように「利きあご」がある。ガムを口の中に放り込んだとき、自然とガムを噛み始めるのが利きあごだ。記者の利きあごは右側らしく、西原講師に、「顔の左側がたるんでいます。右が〃地鶏顔〃で、左が〃ブロイラー顔〃」と指摘された。
  利きあご側の筋肉は引き締まってほおがピンと張る(地鶏顔)が、使わない側のほおやあごの筋肉は緊張感がなくなりたるむ(ブロイラー顔)。すると、
  「利きあご側は口角が引き上げられるので、人によっては目の周囲の筋肉が極端に引き締まってしまい、目が小さく見えることもある。いつも同じ側の歯を酷使するので、歯並びにもひずみが起き、顔がゆがむのです」(西原講師)片側噛みはこんな現象も引き起こすという。
  「顔と首の筋肉は連動していて、片側噛みを続けていると、首の筋肉は利きあご側の筋肉に引っ張られて縮み、利きあご側へ首が傾いてきます。すると、寝るときには利きあごを下にすると楽になり、"眠りグセ〃がついてしまうのです」(西原講師)
  この眠りグセ、顔の骨格を歪める作用としては、口呼吸や片側噛みよりも強力らしい。というのも、仰向けで寝ているときは人間の頭は五キロほどだが、横向きやうつぶせで寝ると、枕や体重の圧力を受けて六〜九キロもの重さになる。つまり、横向きやうつぶせで寝ていれば、たった十センチ四方のあごに随時六〜九キロの重さがかかっていることになるのだ。
  口呼吸→片側噛み→寝相の悪さという連鎖が「ブス顔」を生み出す原因となっているようだが、実はこれ以外にも、私たちが何げなくやっている悪いクセがある。
  例えばほおづえ。たとえ短時間であっても、五キロもの頭の重さがあごに加わるのだから、顔が歪む原因になるのだという。こうした何げないしぐさがあごの動きを阻害し、顔を歪めることは、現役の歯科医も指摘している。『女のキレイは「歯」と「口もと」から』の著者、林歯科(東京都中野区弥生町)の林晋哉氏はこう言う。
  「何かに夢中になっていると、つい奥歯を噛みしめたり、食いしばったりしてしまいますが、そうするとあごの関節や筋肉が疲れ、凝りや痛みを生じます。噛むのに偏りがあったり、横向きやうつぶせ寝をしていれば、片方の筋肉が凝ってしまいます。すると、片側のほおが盛り上がったり、口元が歪んだりと顔のバランスが崩れていくのです」
片側噛み矯正で表情か生き生き
  いずれにせよ、西原講師によれば、三大原因を取り除くことが美人への近道のようだが、ではどうしたらいいのか。
  まずは口呼吸。西原講師によれば、口呼吸をやめるには、口と肛門を閉じ、背筋をしっかり伸ばして腹式呼吸する。鼻には市販の鼻腔の容積を広げるテープや器具を使い、口は紙テープを軽く張って、鼻呼吸しやすくするといいという。きちんと鼻で呼吸できるようになれば鼻の周りの筋肉が鍛えられ、三カ月くらいで鼻が高くなるそうだ。
  片側噛みの矯正には、虫歯になりにくいキシリトール入りガムを噛む。利きあごのほうに一つ、反対のあごに二つ入れ、軽くリズミカルに小刻みに噛む。強く噛みすぎると、歯が沈んでしまうので注意。
  「ガムを使って片側噛みの矯正をすれば、あごや顔の筋肉がグッと引き締まっていい顔になる。たるみがなくなるので、目がぱっちりと大きくなり、表情が生き生きしてきます。ふ抜け顔だった人が、すっきりとした美人に変わりますよ」(西原講師)
  寝相は、仰向けで寝ることを心がける。高い枕は気道を圧迫し、ロ呼吸を誘発するので、硬めの布団に枕なしで寝てみる。どうしても必要なら、頭が沈み込む柔らかい羽毛枕がいい。
  早い人なら、二週間で効果が表れると、西原講師は言う。無意識のうちに歪めていた美しさ。今日から気をつければまだ取り戻せるかもしれない。

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