15

  刑法は原則として過失を罪としないそうです。刑法第38条1項は「罪を犯す意思がない行為は罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りではない」と規定されているそうです。業務上過失致死傷罪はこの例外規定の一つだそうです。この業務上過失致死傷罪は警察では捜査1課の担当だそうで、普段、強盗、強姦、殺人などを担当している捜査官が、凶悪犯を取り調べるのとまったく同じ手法で取調べをするそうです。
  医療崩壊の中で、ある脳外科医の話が取り上げられていました。少し読みます。
  「脳動脈瘤の壁は破れやすい。術中にガイドワイア、あるいは動脈瘤内に留置すべきコイルが壁を貫き出血した。この事故で最終的に患者は死亡した。家族が警察に届け出た。警察の取り調べの後、ショックで30台半ばの担当医はしばらく勤務できなくなった。警察で肉体的暴力を受けた訳ではない。この担当医は、心理的に追い詰められて、以後、リスクの大きい業務を止めた。本来の専門医療にたずさわることが危ぶまれたが、一ヵ月後より、少しずつ本来の業務に復帰できた。
一般的に医師は、ごく普通の人と同じく、強くない。暴力を背景にした攻撃には極めて崩れやすい。常々、反省ばかりしているのでその反省点をつかれると防御できない。この医師は単に事情聴取を受けただけで送検されたわけではなかったのに、これだけのダメージを受けた。」(医療崩壊の52ページ)
  ちなみに医者を刑法で裁くのは先進国の中で日本だけだそうです。
  また民事裁判であっても、裁判官の変な正義感、例えば、脳性マヒの子を抱えて、これからお金もかかって大変だろう、自分がここで無罪判決を出したらこの家族は大変なことになるのは目に見えているという理由で有罪判決が出されるならこれは本末転倒になります。少なくとも刑事罰で一度でも有罪判決が出れば、前科がつくことになり、大学教授はもちろんどこかの病院の病院長にもなれないそうです。そのドクターの前途を閉ざすことにもなりかねません。
  薬による被害の救済はスモン病被害者の主張で1979年に出来た、「医薬品被害救済基金」というのがあるそうです。通常の使い方をしていて、薬害にあった場合、自動的に救済されるシステムが出来ているそうです。基金は製薬会社がお金を出し合い、あと一部は国から出されているそうです。
  これと同じように、医療事故にあった場合、自動的に救済される制度、これが無過失保障制度ですが、ドクターに過失がなくても保証される制度です。スウェーデンやニュージーランドではすでに制度が出来ているそうです。この制度でも作らなければ、今のような状態では、もう日本中から外科系のドクターがいなくなってしまうと心配されています。
  この無過失保障制度は1月24日の新聞に出ていましたが、今年中の設立をめざして、準備委員会が具体的な保障金額の詰めにまで入っていると出ていました。出産事故で脳性マヒの場合、2千数百万円になりそうだということです。今裁判では1億数千万が普通ということでしたから、かなり金額は抑えられているようです。
▲このページのトップに戻る