最近、医療制度改革を扱った本にはイギリスの医療崩壊を取り上げるのが定番となっておりますので、それにならってイギリスのことについてしばらくお話したいと思います。

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  OECDのデータですが、人口1000人当たりの医者の数です。イギリス2.0と日本1.9は似たような数です。世界的に見てかなり医者の数が少ない現状です。フランス・ドイツ3.3の3分の2以下です。OECDの平均2.8をかなり下回っています。アメリカ2.7は思ったより少ないようです。この資料とは別にWHOが発表した世界192ヶ国のデータで日本の医者は人口1000人あたりの数で、世界で63位、歯医者は28位だったそうです。ここには出ていませんが世界一医者が多い国はキューバだそうで、1000人当たりの医者の数は6人だそうです。
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  医療費の対GDP比はかせいだお金のうち、どれだけの割合を医療費に使っているかです。%で表します。イギリス7.9%(公的医療費6.7%)と日本8%(公的医療費6.5%)はまたよく似ています。ドイツ10.9%(公的医療費8.5%)・フランス10.4%(公的医療費8.1%)の8割程度しかかけていません。ここで注目すべきはアメリカ15.2%(公的治療費6.8%)です。アメリカはご存知のように国民皆保険がありません。自分で民間の医療保険を掛ける訳ですが、高齢者と身体障害者、低所得者は公的医療が受けられます。その高齢者と身体障害者のメディケア、低所得者のメディケイドだけの公的医療費が日本の全部の公的医療費を上回っているという事実です。これはありえないだろうと。ありえないことが現実におこっているわけです。いかに日本の医療費というものが抑えられているかということです。あとアメリカの医療費だけが飛びぬけて大きいということです。これをみても民間にできることは民間で、医療保険も民間でやったほうが医療費が抑制できるなんていうことはウソだと言えると思います。どんどん伸びる一方で、高すぎる医療費がアメリカのネックになるという話は後で出てきます。
  とにかくイギリスと日本は医者の数、医療にかけるお金が非常に似通っているということです。上の数字で2001年の総医療費OECDの平均が8.3%ということですから、イギリスと日本は完全に下回っています。先進国の集まりであるG7の国のダントツの最下位争いを二つの国でやっていたということです。この後、イギリスは医療費を増やし、2006年の推計が対GDP比が9.4%です。日本だけが取り残されることになりました。1970年のOECDの平均は5%ぐらいだったそうで、医学の進歩で医療費が上がるのはどの国でも同じでしょうがないことだと思われます。

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ここで、GDPと国民所得の関係について言っておかなければいけないと思います。どれも似たような数字らしいですが、厚生労働省のデータを見ていると、GDPと国民所得を上手に使い分けているようで、どっちを使っているかよく注意しておかないと何かだまされているような気がします。
 昔、GNPと言われていたものが、いつの間にかGDPになっている。海外からの移転を除いたものが国内総生産GDPで、含むものが国民総生産GNPです。さすがに今はGNPを使うことはないようですが、国民所得という言葉が時々でてきます。OECDのデータはGDPで統一されているようですが、厚生労働省では両方でてきます。国民所得とは海外からの移転を含み、間接税を除き、補助金を加えたものです。ここではあまり深く考えないで、GDPよりは国民所得の方が小さいのでGDP比何%よりも国民所得比何%の方が大きめにでるということを理解しておけばいいと思います。

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  日本の医者がどれだけ忙しくやっているかを説明するグラフです。日本の医者を1として赤が外来患者数、黄色が医者1人当たりのベッド数です。それにしても日本人は真面目です。アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの医者の担当している患者数の平均は日本の医者の3分の1ぐらいなので、大体よその国の3倍ぐらい働いています。
  イギリスはドイツ・フランスの3分の2以下の数しかいないのに、ドイツ・フランスと一緒ぐらいしか働いていません。これではイギリスの医療が機能していないだろうということが推測されると思います。実際イギリスの医療は崩壊しているようです。
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  股関節置換の手術を受けるための待機時間の平均です。緊急ではない手術ということで股関節の置換手術が選ばれたのだと思います。医者の数と待機時間は反比例するということが言いたいのだと思います。フィンランド・オーストリア・ノルウェー・スペイン・デンマーク・オランダの平均の待ち時間が150日ぐらいなのに、イギリスでは断トツの250日待たされます。250日待たされるということは8ヶ月以上ということです。日本が出てこないのは、医者ががんばりすぎて、データが参考にならないということでしょうか。

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