A 8020推進財団は噛むことの8大効用を挙げて、その頭文字を組み合わせ、「卑弥呼の歯がいーぜ」というキャッチフレーズで噛むことの重要性をアピールしています。
ひ 肥満を防ぐ
よく噛むと脳にある満腹中枢が働いて、私たちは満腹を感じます。
よく噛まずに早く食べると、満腹中枢が働く前に食べ過ぎてしまい、その結果太ります。
よく噛むことこそダイエットの基本です。
み 味覚の発達
よく噛むと、食べもの本来の味がわかります。人は濃い味にはすぐに慣れてしまいます。
できるだけ薄味にし、よく噛んで食材そのものの持ち味を味わうよう、心がけましょう。
こ 言葉のの発音がはっきり
歯並びがよく、口をはっきり開けて話すと、きれいな発音ができます。
よく噛むことは、口のまわりの筋肉を使いますから、表情がとても豊かになります。
元気な顔、若々しい笑顔は、あなたのかけがえのない財産です。
の 脳の発達
よく噛む運動は脳細胞の動きを活発化します。
あごを開けたり閉じたりすることで、 脳に酸素と栄養を送り、活性化するのです。
子どもの知育を助け、 高齢者は認知症の予防に大いに役立ちます。
は 歯の病気を防ぐ
よく噛むと唾液がたくさん出て、口の中をきれいにします。
この唾液の働きが、 虫歯になりかかった歯の表面をもとに戻したり、
細菌感染を防いだりして、 虫歯や歯周病を防ぐのです。
が がんを防ぐ
唾液に含まれる酵素には、発がん物質の発がん作用を消す働きがあるといわれ、
それには食物を30秒以上唾液に浸すのが効果的なのだとか。
「ひと口で30回以上噛みましょう」 とよく言いますが、よく噛むことで、がんも防げるのです。
い 胃腸の働きを促進する
「歯丈夫、胃丈夫、大丈夫」と言われるように、よく噛むと消化酵素がたくさん出ますが、
食べものがきちんと咀嚼されないと、胃腸障害や栄養の偏りの原因となりがちです。
偏食なく、 なんでも食べることが、生活習慣病予防にはいちばんです。
ぜ 全身の体力向上と全力投球
「ここ一番」力が必要なとき、ぐっと力を入れて噛みしめたいときに、
丈夫な歯がなければ力が出ません。
よく噛んで歯を食いしばることで、力がわき、 日常生活への自信も生まれます。
以上で「卑弥呼の歯がいーぜ」だそうです。噛むことのメリットだけ述べて終わりになっています。噛むことは果たしてメリットばかりなのでしょうか。デメリットはないのでしょうか。
形あるものはすべていつかは壊れます。しかも使えば使う程壊れやすくなる。誰にも異論のないところだと思います。歯や義歯、歯槽骨も形あるものです。永久歯が生えてくるのは6歳ぐらいから。50歳の方だと歯によっては40年以上も酷使し続けてきたことになります。寝てる間も歯軋りで使っていますから、24時間と言っても過言ではないでしょう。歯も体と一緒に年を重ねてきたのです。少しは労わりましょう。歯も義歯も使えば使う程破損、破折の危険性が高まります。歯を支える歯槽骨も壊れる危険性が高まります。歯周病が悪化するということです。「力で歯周病が悪化する」これはかなりの歯科医師が認めるところではないでしょうか。
メリットばかり言っておしまいでは歯科医師として片手落ちではないでしょうか。
ウォーキングの専門科デューク更家さんの書かれた次の文章を思い出します。
「病と闘いながら、医者に薦められたことがきっかけで、健康になりたい一心で毎日毎日歩き続けたあげく、膝を痛め、車椅子の生活を余儀なくされた母。歩けなくなった事実は、何事も自分でやらなければ気がすまない勝気だった母のエネルギーを落とし、あっという間に亡くなってしまった。元気になるためにあんなにがんばって歩いた母。 歩くって、いったいなんやろう!」
そこからウォーキングの研究が始まったそうです。
「歩く」を「噛む」に置き換えてもう一度読み直して下さい。私の言いたいことがわかると思います。デメリットを言うことでメリットの価値が少しでも下がるでしょうか。
ある程度噛んでいいのは若い時だけ、人によって時期はすこしずつ違うでしょうが、 目安として50歳を過ぎたら必要以上に噛まないで。歯も老化しています、壊れてしまいます。これが偽らざる気持ちです。
メリットもデメリットも勘案して上手に長生きしてください。
(注)デューク更家さんの文章は部分だけ利用させていただきました。誤解が生じるといけませんので、できたら全文をお読み下さい。デューク更家さんの公式ホームページの中のWalking Paradiseというところにあります。